2012年02月01日 12:39
沖縄防衛局の選挙介入か―。告示まで1週間を切った宜野湾市長選をめぐる防衛局の調査問題で、普天間問題に絡み防衛局への不信を募らせる有権者や選挙の影響を懸念する関係者は「県民の怒りを理解していない」「公平な選挙に水を差す」などと怒りをあらわにし、一斉に反発した。一方、防衛局内では基地に絡む主要選挙では以前から同様の〝介入〟があったとの声も。民主主義を揺るがしかねない国家組織のゆがみも浮き彫りになった。
「具体名での投票依頼もある」「上司の働き掛けは以前から」―。現役自衛官や防衛関係者らは31日、沖縄タイムスの取材に対し、上司や上官による特定候補者への投票依頼が恒常的に行われていたと証言した。防衛省の「武官」「文官」の両方で公職選挙法に抵触する働き掛けがあった疑いが浮上している。
防衛関係者によると、県知事選や那覇、名護、宜野湾の各市長選など基地問題に関わる主要選挙では、以前から局職員に投票の働き掛けがあったという。
局長の指示を受けた担当職員がメールや直接面談などで「業務をスムーズに進めるため、選挙に行くように」「家族にも伝えてほしい」などと促し、具体的な候補者名は出す場合と出さない場合があったという。
同関係者は「家族や親族を対象にした『講話』の開催は聞いたことがない。事実なら初めて呼び掛けたのでは」と推察した。
また、別の関係者は「過去の選挙でも、真部局長は棄権するなよと言っていた」と振り返る。
真部局長は会議の席上で幹部に対し「職員に棄権してはいけないと伝えなさい」と指示。幹部が各部署の職員に伝えていたという。同関係者は「誰々に入れろとは口が裂けても言わない。言ったらまずいというのは局長は分かっているはずだ」と話した。
県出身の30代の現役自衛官は「上官がだれだれ(の当選)が危ないから、選挙に行くように、との呼び掛けはある」と証言する。
候補者の具体名が出るのは少人数の場合が多く、防衛政策に通じた候補者の支援も呼び掛けられたという。
同自衛官は「政治に関心がなくても上司から指示されれば、後で投票に行ったか聞かれるので投票することが多い」と述べ、武官である「制服組」でも働き掛けが日常的に行われている現状を語った。
一方、沖縄防衛局の職員は午後5時以降の退庁時、一様に硬い表情で帰路に就いた。50代の男性職員は「聞いた話」として「局長講話は大事な一票なので選挙に行くようにという趣旨のようだ。特定の誰かに投票するようにとは言ってないのでは」と推し量るように語った。
防衛局での調査を終えた防衛省職員2人は午後8時35分ごろ、那覇空港出発ロビーに姿を見せた。待ち受けた報道陣から「国会質疑内容の事実関係は」「真部局長は講話をしたのか」などの質問が矢継ぎ早に飛んだが、「まだ調査中ですから」「内容は大臣に報告して、あす正式に衆院予算委員会の理事会に報告されるので、それまではご容赦ください」などと述べるにとどめ、足早に搭乗口に消えた。