2016年02月16日 17:40
「基地の地主さんは年収何千万円なんですよ、みんな」。2015年6月、自民党若手議員の勉強会で、ベストセラー作家の百田尚樹氏が主張した。「ですからその基地の地主さんが六本木ヒルズとかに住んでいる、大金持ちなんですよ」-こう言葉を続け、「もし基地が出ていってしまったらえらいことになるんですね。今まで毎年入っていたお金がなくなりますからね」とも述べた。
あたかも米軍や自衛隊に土地を提供している地主は、“長者”ぞろいで基地の返還に反対していると受け取れる発言だ。本当だろうか。
県が13年3月に発表した「沖縄の米軍基地」の11年度軍用地料の支払額別所有者数(米軍・自衛隊基地)によると、地主4万3025人のうち、100万円未満の地主が全体の54.2%に当たる2万3339人で最も多い。
次いで100万円以上~200万円未満が8969人で20.8%を占め、200万円未満の割合が75%に上る。500万円以上は3378人で7.9%。百田氏の発言とは大きくかけ離れているのが実態だ。
「どういう認識でこの発言が出たのか理解できない」。県軍用地等地主会連合会(土地連)の眞喜志康明会長(69)は百田氏の発言に疑問を呈する。
土地連によると、市町村分を引いた地料の総額約800億円を会員数約4万2千人で割っても、平均ではおよそ200万円。地主の皆が何千万円というにはほど遠い、と強調する。
眞喜志会長は1953年に発足した土地連の成り立ちを念頭に「地主の皆さんが戦後収容されている間に自分たちの土地を取られたのが、そもそもの始まりだ」と指摘する。
百田氏のいう“みんな”ではないが、地料額が1千万円以上の人もいる。眞喜志会長は「それはもともと先輩方、ご先祖様がしっかりと確保していた土地だ。それについて(地料が)多すぎるとかどうだとか、そういう議論ではないでしょう」と訴える。
県内外に約3千人の会員がいる一坪反戦地主会の比嘉宏事務局長(63)も憤りをみせる。「もともと住んでいた土地を奪われ、別の生活をせざるを得なかった人たち。そんな理不尽なことを言われる筋合いはないだろう」
比嘉事務局長は百田氏の「普天間飛行場はもともと田んぼの中にあった」などの一連の発言を振り返り、「歴史的経緯はどうでもよいという強権的な姿勢が透けて見える」と語った。(「沖縄基地」取材班)